075 diary.

ワクワクするものだけ摂取して生きていたい

初心忘るべからず

ひとりで白内障手術を完投するようになってから1年半が経った。
今年度に入ってからは件数は数えてないけど、もう200〜250件ぐらいはやったのかな?

「できるところまで自分なりにあれこれ考えてやってみな、何があっても俺がなんとかするから。(※ただよっぽど危なっかしい時は流石に直前に止めてくれる)」と、いい意味で伸び伸びとオペさせてくれた去年の部長、
ある程度安定して完投できるようになって時間も徐々に短くなってきたけどまだ荒削りなところもあるのを細かい指導で磨いてくれた今年の部長、
その2人と、オペがうまくて上手にアドバイスをくれる先輩たちに
すくすくと育てていただいたおかげで、今は普通の症例なら安定して10分切れるようになってきた(時間がはやけりゃいいってわけじゃないけど、だいぶ無駄が削れてきたってこと!)し、ほとんど破嚢もしなくなったし、成熟白内障も散瞳不良例もたくさんこなしたし、何より、トラブルシューティングが上手くなってきたのが一番自分で成長を感じる。

今はそんなだけど私の1件目のオペは40分弱かかってたし、
最初の方のオペ動画を今振り返って見ると自分でまあまあヒヤヒヤするのだけれど、
でも、私にとって1件目だろうが200件目だろうが、その患者さんにとっては一生に一回の白内障手術(まあ正確には左右あるので2回なんだけど、)ということを今も、これから先もずっと忘れてはいけなくて。

白内障手術をすれば基本的に視力がグッと上がるし見え方がだいぶクリアになるのでほとんどの患者さんが喜んでくれて感謝を述べてくれるんだけど、でも、その患者さんの笑顔と言葉に私もかなり救われていて。


中でも一人すごく私自身が救われた人がいて。

私の最初の数件目に担当した人で、とても優しくて朗らかな方だったのだけど、
術翌日、術後1週間、2週間、1ヶ月後、2ヶ月後、3ヶ月後、半年後の術後の定期検診に来るたびに、
「先生ほんまおおきに!おかげさまでものすごく見えやくて生活も快適になった!」
と毎回嬉しそうに笑って言ってくれて、
それに加えて、「先生ほんまにオペうまかったよ!今日も外来の待ち時間に先生がオペ上手って隣の人に言うといた!」なんて何度も言ってくれて。
当時は手術時間が30分程度かかっていたし、手術中に私が部長から色々と指導を受けながら手を進めていたのも聞いていただろうし、というかそもそも手術を受ける患者さん側からすると執刀医のオペがうまいかどうかなんて絶対に分かりっこないんだけれど、私がまだだいぶ経験が浅くて少し不安があるのをきっと把握した上できっと言ってくれてたんだよね。

なかなか手術が理想通りできなかったりなかなか上達せず燻っているときも、
その人の言葉と笑顔と、優しさを思い出して頑張れた。とても救われてきた。
 


まだ若手で未熟な私を信頼して通院してくれている患者さんのこと、とてもとても大事にしないといけない、
今ものすごく心に留めている。

 

 

あとね、最近、別の患者さんにすごく嬉しい言葉をかけてもらって。
3ヶ月ごとに通院してもらってる緑内障の90代の患者さんで、いつも通り診察を終えて少し話してたら、
「先生、いつもありがとう。まだ若くて大変なことも多いかもしれないけど、私は、先生の人柄が好きで、先生の診察を受けたくて、先生の外来に通っているからね。いい先生に出会えてよかったよ。」
と言ってもらえて、仕事での自信が低迷しているのもあって、嬉しすぎて、患者さんが診察室から出ていったあとさすがに泣いた。



という話を書き残したのも、働き出して5年目、眼科医として働いて3年目、自分の外来を持って手術をするようになって2年目、
ただただ知識と技術を磨けばいいだけじゃなくて、人間性や倫理観も問われることが多いと感じることも最近多くて、自分の初心を忘れないでおこう、と思ったから。

 

なんかさ、最近よく患者を紹介してくる開業医の先生が本当にむちゃくちゃで。

患者さんから話を聞いてると杜撰な治療をされてることも多くて、紹介状もものすごく雑だし、医療を提供する立場としての責任感を全然感じられなくてもっっのすごい腹が立つんよね。

まあでも年数を重ねて、開業医とかともなるとちょっとは感覚変わってくるんだろうなとも思ったりも...


私は勤務医だし、「若手のうちは売上のことは気にしなくていいからね。」と言ってくれる上司の下で伸び伸びと働けていて、何かあったら上司が守ってくれて、シンプルに「患者にとっての利益」だけを考えていられる、本当に恵まれて守られている環境にいるから迷いなく患者ファーストで考えられる余裕があるんだなと思う。

これがどんどん年数を重ねていって上の立場になったり、クリニックで働いたり開業しようもんならきっと他に考えないといけないことがたくさんあってそうはいかなくなってくるのかもしれないけど、本来医療はそうあるべきだし、私の家族が医療機関を受診するときは、患者第一に考えてくれるドクターの元にいってほしいなと思うから。


まあ実際こんな綺麗事ばっかりいって頑張れるような現場ではないんだけど。
できたらぐうたら過ごしていたいし笑、めちゃめちゃイライラしたり腹立つことも多いし、
こっちがどれだけがんばっても患者自信のコンプライアンスが悪かったり病識に乏しいとこっちの努力が水の泡、みたいなこともよくあるし。

人間だもの、色々あるよね。笑


でも、自分のすること、してきたこと、に誇りを持てるように一生懸命頑張ろうと思うし、
今のこの純粋なモチベーションを、この先もずっと忘れずにいられますように。